相続税評価について知っておくべきポイント
相続税評価とは、相続税の課税対象となる財産の評価額のことを指します。
実際の評価と相続税評価は異なっており、それぞれの財産毎に評価方法が異なります。
事前に認識できていれば、財産の持ち方を変えるだけで節税を行うこともできる反面、
知らないと大きく損をしてしまう部分でもあります。
ここでは代表的な財産の評価方法についてポイント絞って解説します。
預貯金の評価方法
預貯金は、相続発生時の預入残高で評価します。
この金額の確認は、金融機関から預金残高証明書を取り寄せて預入残高を確認します。
注意点としては、名義が故人のものでなくとも、実質的に故人が管理していた口座も相続財産として評価する必要があります。
具体的には、「名義預金」といわれており、配偶者名義やお子様名義の預貯金を、故人が管理していた場合などです。
上場株式の評価方法
上場株式は、原則として、次の4項目のうち、最も低い金額で評価します。
① 課税時期の最終価格
② 課税時期の月の毎日の最終価格の平均額
③ 課税時期の月の前月の毎日の最終価格の平均額
④ 課税時期の月の前々月の毎日の最終価格の平均額
生命保険金の評価
生命保険は、「500万円×法定相続人の数」が非課税になります。
具体的には、生命保険金が2,000万円、法定相続人が2人いる場合、
2,000万円-(500万円×2人)=1,000万円
が生命保険金の相続税評価額になります。
土地の評価方法
これまでご説明しました、預貯金や株式・生命保険と違って、土地の時価を把握するのは大変です。
計算方法や、相続税の減額措置が複数あるため、専門家によっても評価が変わることがあります。
相続した土地の評価方法は、土地の利用状況(地目)によって異なりますが、ここでは現況地目が宅地の場合の評価方法を簡単にご紹介します。
宅地の評価方法は、大きく
①路線価方式
②倍率方式
の2パターンに分けられます。
どちらで評価するかは、国税庁HPの路線価図・倍率表で調べられます。
路線価方式
路線価方式は、宅地が接する道路の価格を基に評価する方法で、「地積×持分×路線価」で計算をします。
路線価がいくらなのか?は国税庁のページから下記の流れで確認を行います。
①下記のページから、調べたい土地を探します。
②該当箇所を選択すると、下記のようなページになります。(神奈川県藤沢市のページを参考として掲載)
道路に、数字とアルファベットが書いてあります。
上記の「270D」がどういう意味かというと、この道路に面している土地は、1㎡あたり270,000円で評価するという意味です。
アルファベットは借地権割合で、借地権を持っている人だけ関係します。
例えば、面積100㎡、持分割合1/1、路線価27万円の土地の評価は、
100㎡ × 1/1 × 27万円=2,700万円
となります。
倍率方式
路線価図をみると、場所によっては、路線価が書かれていない場所があります。
下記のような場所には、路線価方式ではなく、倍率方式で計算をします。
※神奈川県鎌倉市の路線価図を抜粋
倍率方式は、「固定資産税評価額×持分割合×倍率」の計算式で算出します。
倍率がいくらなのか?も、路線価と同様に、国税庁のページから下記の流れで確認を行います。
①下記のページの赤丸の部分から確認します。
②下記のページが表示されます。これが倍率表で、評価しようとする土地の地目(宅地、田、畑など)ごとに、数字が記載されています。
なお、地目は、登記地目より現況地目を優先します。
例えば、固定資産税評価額2,000万、持分1/1、倍率1.1(宅地)の土地の場合、
2,000万円 × 1/1 × 1.1 = 2,200万円
となります。
評価減が検討できる要素
冒頭に説明した通り、土地は使用方法や計上によって、相続税評価の減額を検討することができます。
ここではいくつか代表的なケースを解説します。
●借地権
相続税評価額は、路線価方式・倍率方式で算出した評価額に、借地権割合を乗じて計算します。
借地権割合は、路線価図に記載のアルファベットから参照します。
●土地所有者の貸家が建っている土地の評価(貸家建付地)
アパートや貸家の敷地に使われている土地を、貸家建付地(かしやたてつけち)といいます。
計算方法は、「自用地評価額 – (自用地評価額×借地権割合×30%)」となります。
●奥行価格補正率
「奥行価格補正」とは、土地の奥行距離が一般的な形状に対して長すぎたり短すぎたりして、使用しにくいと認められるときに適用されます。
奥行価格補正を利用できる奥行距離は、その土地が所在する地区区分によって定められており、
奥行の長さによってのみで決まるのではなく、その土地が所在する地区区分と組み合わせて判断されます。
奥行価格補正の計算手順は次のとおりです。
①土地の地区区分を路線価図で確認
②補正がかかる奥行の長さを奥行価格補正率表で確認
③その土地の実際の奥行距離を確認
④補正率を奥行価格補正率表で確認
⑤評価額を計算
●地積規模の大きな宅地
大都市圏では500㎡以上、それ以外の地域では1,000㎡以上の土地で、次の要件を満たすものは、大幅な減額評価が可能になります。
・大規模工場用地ではない
・マンション適地ではない
・その地域における標準的な宅地の面積に比して著しく土地の面積が広大である
・開発行為を行う場合、道路等の公共公益的施設用地の負担が必要である
広大地評価の計算式は「路線価×地積×広大地補正率」となります。
広大地補正率とは、「0.6-0.05×(地積÷1,000㎡)」となります。
例えば、地積が1,000㎡の土地であれば、広大地補正率は0.6-0.05×(1,000㎡÷1,000㎡)=0.55となります。
広大地補正率が0.55になるということは、通常の土地の評価額の55%にまで評価額が下がることを意味します。
建物の評価方法
建物の評価は、固定資産税評価額になります。
建物の固定資産税評価額は、3年ごとの見直しで経年減価が反映され減額されていきます。
また賃貸アパートなど、人に貸している建物の場合は計算方法が異なり、
固定資産税評価額×(1-30%×賃貸割合)
で計算を行います。
賃貸割合とは貸している部分の床面積の割合で、貸している部分の床面積が広いほど評価額が下がります。
つまり賃貸アパートでも、空室が1ヶ月以上続いている部屋が複数ある場合、その分相続税評価は上がってしまいます。
例えば固定資産税評価額1,000万円で、賃貸割合が80%の建物の場合、
1,000万円×(1-0.3×0.8)=760万円
の評価となります。
まるごと相続
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