相続発生後の手続きをざっくり解説します
このコラムでは実際に相続が発生した場合、行うべき手順についてざっくり説明していきます。
相続が発生し、今まさに手続きに直面している方は、ダウンロード可能なチェックシートをご活用ください。
役所の手続きを行う
7日以内に以下に書いている7つの手続きをしないといけません。
①死亡診断書の取得
②死亡届の提出
③火葬許可申請書の提出
④国民健康保険被保険者資格喪失届の提出
⑤後期高齢者医療資格喪失届の提出
⑥介護保険被保険者資格喪失届の提出
⑦年金受給権者死亡届の提出
また、請求するともらえるお金もあります。(原則5年間)
・葬祭費・埋葬料または埋葬費が支給される
・遺族年金
これらの手続きも忘れないようにしましょう。
相続人が誰かを決定する
相続人が決定したら、法定相続人であることを証明するための書類として、亡くなった人の戸籍謄本を取得します。
亡くなった方の本籍地である役所に発行してもらうことになるため、直接役所に行くか、遠方で難しい場合は郵送で取り寄せます。
この際、代理人の本人確認書も必要となり、郵送の場合は役所のホームページから請求書をダウンロードし、請求書に必要事項を入力して提出します。
取り寄せるまでに時間がかかりますし、年末年始など連休と重なる場合はさらに時間を要するため、すばやい対応が必要となります。
遺産を洗い出す
相続はすべての遺産を分配するため、亡くなった人が残した資産をすべて洗い出す必要があります。
遺産は、貯金や証券、土地だけではありません。
借金がある場合は、借金も相続されます。
後述しますが、借金があることが分かっている、もしくは借金をしている可能性がある場合は、「限定承認」というものも検討が必要です。
ここでは代表的な遺産について、調べる方法を説明します。
①銀行預金について
預金は、故人の通帳やキャッシュカードが残っている場合は分かりやすいですが、
全てが把握できない場合、しらみつぶしに銀行に当たるしかありません。
いくつの口座を保有しているのかすら分からないという方もいると思いますが、まずは家中の引き出しやパソコンのパスワード管理などを見ながら探しましょう。
とくに今はネットバンクを利用している人も多いので、スマホアプリやパソコンデータ、本人宛ての銀行からのメールなども見た方がいいでしょう。
事前に、どの口座を利用しているのか、どこに通帳を保管しているのか生前から確認してまとめておくことが大切です。
②有価証券について
証券については定期的に運用報告書が自宅に届いていることも多く、そこから存在を知ることが出来ます。ただ、ネット証券については運用報告書が電子化されていることも多く、その存在を知ることが困難なケースも増えています。その場合、証券保管振替機構(通称:ほふり)に連絡することで証券について知ることができます。
受付から2週間程度で、結果が返送されてきますので、そちらで証券口座の情報が確認できましたら、証券会社へ連絡を取りましょう。
③生命保険について まずはご自宅に生命保険の証券が無いかを確認しましょう。 手元に証券が無い、もしくは抜け漏れが懸念されそうな場合は、一般社団法人生命保険協会という団体が有料で調査をしてくれます。 通帳同様、自分たちで把握できていたら不要ですが、「見当がつかない」という場合は、外部機関に相談してみましょう。
(参考)生命保険協会ホームページ
④不動産について
行政機関から毎月4月ごろに送付されてくる「固定資産税の納税通知書」で調べるのが一般的です。
ただ、納税通知書だけだと、共有不動産については把握が出来ないため、ヌケモレが発生してしまう可能性があったりと、調査としては不十分であることが多いです。
そのため、所在する市区町村がわかったら、その市町村役場にて、亡くなった方の所有する財産すべての不動産が記載された「名寄せ帳」の写しをもらいましょう。
ただし、名寄帳の取り寄せが可能なのは被相続人と相続関係にある方のみとなります。
相続人である証明は、戸籍謄本の写し(コピー)で行います。
分け方について決める
遺言書の有無によって2パターンあります。
①遺言書有り→原則遺言書通り、相続人全員の同意があれば話し合いも可。
②遺言書無し→話し合いで解決できない場合は調整・裁判。このときは法定相続分が考慮される。
遺言書の有無を確認しつつ、その資産を相続するかどうかを法定相続人もしくは遺言書に記載された相続人が、「相続の事実を知った日から3ヶ月以内」に判断・手続きを行う必要があります。
相続において、相続人は「単純承認」「相続放棄」「限定承認」の3つから相続方法を選択できます。
・単純承認:資産と負債をすべて相続する
・相続放棄:資産と負債をすべて相続しない選択肢で、相続放棄をしたい相続人が家庭裁判所に、相続放棄の申請を行う必要がある
・限定承認:続によって得た財産の範囲内で債務を引き継ぐ方法
借金がある場合、相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内であれば相続放棄ができますが、3ヶ月を過ぎていると相続放棄をすることができなくなり、負債も含めて相続しなければならなくなります。
また、注意点として、相続を知ったときから3ヶ月以内であったとしても、資産に手を付けてしまうと(亡くなった方の預金を引き出す等)、相続の意志があるとみなされ、相続放棄が出来なくなります。
原則として資産の全容が分かるまでは、資産には手を付けないようにしましょう。
ただ、後から借金があることが判明して、相続しなければならなくなったとしても、特段の事情があり、それを客観的に証明できる場合は、過去判例で認められた事例もあり、「相続放棄」ができる可能性もあります。
そのため、上記のような状況があって、借金を相続しなければならなくなったとしても、弁護士に相談することをおすすめします。
また、借金がある、もしくは借金をしている可能性がある場合は、限定承認の検討余地があります。
ただし、限定承認は手続きが煩雑で、相続人全員が同意しないといけないというデメリットもありますので、十分な検討が必要です。
そのほか、葬儀費用については相続人の同意がなくとも、上限150万円まで(各銀行の相続開始時の預金額✕1/3✕お金を引き出す相続人の法定相続分)は亡くなった方の預金からお金を引き出す場合でも、後から相続放棄を行うことが出来ます。
ただ、この制度を活用するためには法定相続分を明らかにした上で、銀行への申請手続きを行う必要があり、かかる日数を考えると葬儀費用に当てるのが難しい場合が多く、あまり使い勝手が良い制度ではありません。
そのため、葬儀費用などは生前贈与や生命保険などで準備しておくことをオススメします。
上記の方法で、分け方が決まったら、遺産分割協議書を作成します。 遺産分割協議書とは、遺産分割協議で合意した内容をまとめた書類であり、相続人全員の署名と実印が必要となります。印鑑証明の添付も必要です。 相続人の全員が一通ずつ所有しておく重要な書類となります
相続税の申告を行う
遺産を分けたら、次は相続税の申告となります。
相続した遺産額や、誰がどの資産を相続するのかで税額が変わってきます。
相続税を節税するための正しい検討手順は
①二次相続も含めて相続税が最も抑えられる受けとり方を試算
②遺族の状況や気持ちを加味して①をベースに調整
③受けとり方が決まったら自分でやるか税理士に依頼
となります。
申告期限は10ヶ月です。期限内にできなかった場合、無申告加算税や延滞税というペナルティを支払うことになりますし、小規模宅地等の特例と配偶者の税額軽減が使えなくなるため、期日は必ず守ってください。
話し合いでまとまらない場合は、仮で申請しておくという方法もあります。 法定相続分で受け取ったと仮定し、一旦相続税を払っておきます。3年以内に話し合いがまとまれば、改めて申告して還付してもらうというものです
相続資産を受け取る
さいごに相続遺産を受け取ります。
各場面で、なくなった方との関係性を証明する書類として、戸籍謄本の提出を求められるのですが、銀行預金が複数あったりする場合、各銀行用にそれぞれ戸籍謄本を準備する必要があり、非常に手間がかかります。
そのため、まず最初に「法定相続情報一覧図」を法務局に申請し、取得することをオススメします。
この書類は、各銀行に提出する戸籍謄本の代わりとして活用することが出来ますので、何枚も戸籍謄本を取得する必要がなくなります。
ただ、この書類は、法務局が図を作成してくれるというわけではなく、申出者(相続人の1人またはその代理人)が作成して申出書に添付して申請する必要があります。
銀行預金や有価証券(株式、債権など)は、各金融機関で対応が異なりますので、ここでは代表的な対応について説明します。 ①銀行預金 銀行が求める書類を提出し、亡くなった方の通帳の名義変更、もしくは相続人の口座に振り込みをしてもらいます。 書類としては、一般的には下記が必要になります。 □亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本(法定相続情報一覧図でも代用可) □相続人全員の印鑑証明書 □遺言書もしくは遺産分割協議書 □銀行所定の申請書 ②有価証券(株式、投資信託、債権など) 証券会社が求める書類を提出し、亡くなった方と同じ証券会社で、証券口座を開設して証券を引き継ぐか、現金化して現金を銀行口座に振り込みます。 書類としては、一般的には下記が必要になります。 □亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本(法定相続情報一覧図でも代用可) □相続人全員の印鑑証明書 □遺言書もしくは遺産分割協議書 □証券会社所定の申請書 ③生命保険 受取人が生命保険会社に保険金請求を行えば、数日で振込されます。 書類としては、一般的には下記が必要になります。 □被保険者(保険の対象となっている人)の住民票 □死亡診断書・死体検案書 □受取人の戸籍抄本 □受取人の印鑑証明書 □保険証券 □保険会社所定の請求書 ④不動産 相続登記をすることで、所有者となることができます。 書類としては、一般的には下記が必要になります。 □亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本(法定相続情報一覧図でも代用可) □亡くなった方の住民票の除票 □不動産を取得される方の住民票 □相続する不動産の固定資産税評価証明書 □登記申請書
おわりに
「準備する書類多くてめんどくさそう・・」と思われたのではないでしょうか?
確かに、複数の資産がある場合、書類の取得や手続きは非常に煩雑になります。
印鑑証明書の取得以外は、専門家に代理取得・申請を依頼することも可能ですので、
忙しくて中々時間がとれない方は、専門家への依頼を検討しましょう
まるごと相続
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